クールな彼と放課後の恋
ななな、何をーーー!

言ってるのーー!!




「なっ、何訳わかんないこと言って…」


普通にしなきゃ。

この雰囲気から、逃れられない…




「だって、いつもいい匂いするから」

「っ!」

「香水つけてる?」

「つけてないよ!ボディクリームの匂いじゃない?」

「へー」



…あ。

ボディクリームって・・・・


“ボディ”って言葉に、自分で言った言葉に顔を赤くしてしまう。


その時、ゆっくりと稲瀬は私から離れ、私にキスをしてこようとした。






「…………っ」


私はそれを拒むことなく、一度受け入れた。

そして一瞬、唇が離れたとき…








「いつもキスするときって、何考えてるの?」

「…え?」


稲瀬の動きがピタリと止まる。

この雰囲気に耐えられなくなった私は、なんとかここから逃れようと必死だった。



これより先を許してしまったら、このまま突き進んでしまう気がする…

稲瀬のことは好きだけど、まだそこまでは無理……かな。






「…何考えてるって・・・」

「ほ、ほら稲瀬っていつも急にキスしてくるから…そのタイミングって何かあるのかなーって…」

「・・・・」


なんじゃ、この会話…

私…究極にめんどくさいこと聞いてない?


でも、ごめん稲瀬!

今だけ付き合って!




「・・・・・・」

「・・・・・・」


二人の会話が止まる。

気まずい…


そして…





「…もう寝るわ」

「ぇ…」


スっと立ち上がり、私の部屋から出ていく稲瀬。



え、怒ったかな…





「い、稲瀬!」

「ん?」


とっさに引き止めると、稲瀬は何事もなかったような顔をして振り返る。

怒ってはいないようなので、ちょっとホッとする…





「あ、あの…えっと・・・・・」


引き止めてみたものの、なんて言ったらいいのかわからない。





「おやすみ」

「ぁ…」


私の頭をぽんと撫でて、自分の部屋に戻って行く稲瀬。



ホッとしたような…

ちょっと寂しいような気もする……


私は部屋の電気を消して、そのままベットに入った。
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