クールな彼と放課後の恋
その夜



♪ピロン

ピロリーン

キラン!



いつものように私の部屋に来ている稲瀬。だけど、やっぱり私とは少し距離がある。

2人でベットの上に座り、稲瀬はスマホでゲーム、私は少女漫画を読んでいる。


会話はたまにあるが、ほとんど無言の状態…

もっと色々話したり、ちょっとくらい…触れたりとかしても…いいのにな。



稲瀬は、私が香水をつけてることに気づいてるかな…

お風呂上がりに念入りにブローした髪や、買ったばかりのボディクリームも体に塗った。


急に稲瀬に触れられてないだけで、私ったらすごく積極的になってる…

こんなこと…するキャラじゃないよ私…


でも止まらない。

稲瀬に触れたい…触れてないと、寂しいよ……





「…何考えてんの?」

「へ?」


スマホに目を向けたまま、稲瀬が私に聞いた。




「べ、べつに…」


少女漫画を閉じ、両膝を抱える私。

稲瀬はあぐらをかいていた足を崩して、ベットの上にドカっと寝転んだ。


上下黒のラフなジャージに、まだお風呂から上がったままでまだ髪が濡れている稲瀬。

この姿の稲瀬を見るのはもちろん初めてではないけど、付き合い始めてから近い距離にいることが増えたせいか、ものすごくドキドキする…





「もうお前ともそれなに長い付き合いだから、お前の顔見ただけでわかっちゃうんだよね…」

「…なにが?」

「お前が考えてること」


………え。



私を見透かしたように言う稲瀬は、ゲームをやめてスマホをポケットに閉まった。






「お前が何を考えてるのは、さすがにわかんねえけど…」

「けど?」

「悩んでるってことはわかるよ」


稲瀬はクスッと笑った。

その笑顔は自信満々で、いたずらっ子のようにも見えた。






「いえない」

「あ?」


そっぽを向き、そばにあった枕をかかえる私。

顔を見なくても、稲瀬が眉をしかめているのがわかる。
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