クールな彼と放課後の恋
寝転んで真上に稲瀬がいる…こんな体制で稲瀬を見たのは初めてだ。

この角度から見てもかっこいい稲瀬に、ドキドキしてしまうのに、悠なんて下の名前で呼ぶなんて恥ずかし過ぎる…





「い…言わなきゃダメかな?」

「ダメ」


一旦稲瀬から目をそらして言うと、すぐに稲瀬から返事が返ってきた。



やっぱり言わなきゃダメかぁ…

そういうとこは、本当に意地悪だよね。





「呼んでくれるだけでいいよ」


稲瀬の手が伸びてきて、私の髪を揺らしたあと、右手で私の右頬に触れた…

私の頬は熱をおびて、稲瀬の手に伝わってしまっているだろう。



こ、このシュチュエーション、マジでやばい!


石のように固まる私は、どうしたらいいのかわからない。

でも呼ばなきゃね。

きっと呼ばないと、この空気を壊してしまうことなる。

久しぶりに稲瀬に触れられたんだから、壊すようなことは避けたいし…

私はふぅ…と息を吐いたあと、稲瀬をみつめた。





「ゆ、悠…」


言った。

言いましたよ私…


頑張った!





「……」

「えっ」


すると稲瀬が、上から抱きついてきた。


嘘!

どうしよう…


私はまだ、そういうのは出来ない…






「今はそれでいいよ」


次の行動にこわばっていると、稲瀬がそう優しくつぶやいた。





それでいいって…?





「今はそれだけで十分だから」


その言葉にホッとするのと同時に、さっきまでの自分がすごく恥ずかしくなった。



稲瀬が…無理やりするような人じゃないってわかってたはずなのに…

なんで、一瞬信じられなかったんだろう。



私…バカだ。






ぎゅ








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