クールな彼と放課後の恋
席を離れようとする私を、日向が引止めようと呼んだけど、私は止まることも振り返ることもなかった。

言いたいことを吐き出したし、遅い気もするが泣いているところを見られたくなかった…

私は玄関でクロックスのサンダルを履いて、家を飛び出した。

そして悠のマンションを出て、どこに行くわけもなくとりあえず走った…


けれど、マンションの前の子どもの信号は赤になってしまい、すぐに立ち止まる。

私は近くにいる人に泣き顔を見られないように、俯いて信号が青になるのを待つ。



ポケットにはスマホが入ってる…

財布はないけど、まあいいや。


ポケットに手を入れて下を向きながら、しばらく待つと信号が青に変わり、私はやや早足で歩き始めた…




これからどこに行こう…


こんなふうに家を飛び出したなんて初めてだから、どうしたらいいのかわかんないよ。






トン…


ぼーっと歩いていると、すれ違った人と軽くぶつかってしまった。





「あ、すみません」


とっさに謝り、頭を下げようとぶつかった相手をチラッと見ると…




「藤川?」

「永井!?」


ぶつかった相手は、永井だった。





「お前と会うなんて珍しいな…」

「本当にね…」


永井はショール襟のカーディガンを羽織り、中はボタンシャツに黒のカーゴパンツを履いていて、なんだかいつもよりも控えめなファッションに見えたが、それが逆におしゃれにも見えた。




「とりあえず渡るか」

「うん…」


青信号が点滅したため、横断歩道の真ん中にいた私と永井はとりあえず信号を渡り、すぐそばにあるコンビニの前まで来た。





「お前1人で何やってんの?悠は?」

「え、あー…えっと…ちょっと買い物に来ただけだよ。悠は家にいる」

「…ふーん」


永井の目は、どこか私の嘘を見抜いている顔だ。




「あんたは?何してんのよ??」


こうなったら、そっちに話をふろっ!




「あー…俺はこれから、香穂と映画に……」

「香穂と!?」


映画ってことは…デート!!?






ぐいっ







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