クールな彼と放課後の恋
悠とやってきたのは、火事のあった私の自宅に近い公園。

その公園のそばにあった自販機で、悠が買ってくれたミルクティーのホットを受け取る私。


悠は自分の分の飲み物を買うために、自販機に手馴れた手つきで小銭を入れる。




ピッ



私はスッと手を伸ばし、自販機のホットのブラックコーヒーのボタンを押した。



悠はいつもブラックコーヒーを飲むから、言われなくてもわかるもんね。

下から出てきたブラックコーヒーの缶を取り、悠に差し出した。





「…今日は微糖のコーヒーにしようと思ってたのに…」

「え、うそ!」

「嘘」

「む…」


私からコーヒーを受け取り、クスクスと笑いながら公園に入っていく悠。

小走りで悠を追いかけ、悠の着ているストレッチのジャケットを掴む。そして私たちは、公園にあるパンダとラクダのバネがついている遊具に乗った。


パンダの方の遊具に乗っている私は、ハァとため息をついた。

隣のラクダに乗っている悠は、すました顔をして缶コーヒーを開けた。


今日の空は朝から曇空で、気温もあまり上がらないためか、公園には私たち以外だれもいなかった…



外の寒さと、公園の活気のなさと、お母さんのあの言葉が、私の悲しいスイッチが余計にオンされた。





“東京でお母さんと暮らすのよ”





あの言葉を思い出して、また目から涙が溢れ、目から流れる涙を拭い鼻をすすった。


何度考えても悲しくなる…

悠と離れるなんて考えられないよ…


ひとつ屋根の下で、悠と日向と修君…そして私…また期間は短いかもしれないけど、皆で暮らしてきたんだから…

もう家族みたいなものだったのに…

それがなくなってしまうの?


そんなの…ひどいよ。






じーー…………





隣から熱い視線を感じ、ふと目をやると悠が私をじっと見つめていた。





「…なにか?」

「いや…いつになったら機嫌直るかなーと思って…」

「べ、別に機嫌が悪いわけじゃないよ!」

「ふーん…でもお前、さっきからこんな顔してる」


悠は両手の指で自分の眉毛を上に伸ばして、怖い顔をした。





「そんな顔してないよっ」

「してるって。鏡見てみろよ」


ハハッと笑い、缶コーヒーを飲む悠。






ヒュウ……
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