茜雲
ずっと自分の心の奥底にしまい込んでいた感情が溢れそうになった。

今まで告白なんてしたことがなかったからどうしていいのかわからないけど…伝えたくてしょうがなかった。

「茜、俺はずっと茜の事が好きなんだ。あまり話したことはなかった…だけど君の笑顔も、なんでも一生懸命に頑張ってる姿も、全てが好きなんだ。だから付き合ってほしい。」

茜は暗い顔を見せた…今までに観たことのないほど深く暗い眼だった。
その顔はすぐにいつもの明るい笑顔に変わった。
そして、「ごめんね。私は、武内君とは付き合えない。理由は聞かないでね。だって答えられないから…どこがいけないとかじゃなくてどこが好きなのかがわからない。」

「私は武内君が思ってるような子じゃないよ。武内君にはもっといい子がいるよ。だから私とは付き合わないほうがいいよ。」
そういうと君は玄関のドアを閉めた。
僕はそこに茫然と立ち尽くした。

自分の想いを全て詰め込んでぶつけたつもりだった。
僕の言葉は茜には届かなかったのかな。
そうやって自問自答を続けて何時間経っただろう。気がつくと街の外れの海岸まで来ていた。
当然家に帰る気にはならない。
不思議な感じがした…最初は悪いことばかり考えてたらどんよりした曇り空だった。
それから茜の事を考えていたら夕方には燃えるような真っ赤な夕焼けになっていた。
まるで彼女の笑顔を見ている様だった。
しばらくして家に帰ることにした。だけど帰る前にもう一度だけ逢ってから帰ろうと思った。

足がすごい重く感じた。やっぱり逢ってもらえないかなとか考えていたら自然と重くなってしまった。
彼女の家に向かう途中に小さな公園があった。
なんでかわからないけど…その公園に僕は入っていった。
公園の真ん中に藤ノ木が屋根を創っているベンチがあって、そこで考えをまとめることにした。
座ろうと思ったら…黒髪のロングヘアーで小柄な女の子が泣いていた。
しょうがないよな…この子も辛いんだろう…僕がいたら邪魔になっちゃうだろうから他の場所へ移ろうと思った。
しかしあの子に見覚えがあって…気になってしまった。そういえばあの匂い。
匂いは時として視覚より強く記憶に残る。
ということはあの子は…。
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