幼なじみ。
ずっと棚の上に置いているガーベラの花を見つめる。
〜 ♪ 〜 ♪
その時、ケータイの着信が来た。
ディスプレイに表示されている文字を見ると、『お母さん』だった。
急いでメールを見た。
【今日、お父さんと一緒に行くから少し遅くなるの・・・ごめんね?】
ケータイの端に映し出されている時計を見ると、いつもならもう親が来ていてもおかしくない時間だったけど今日はまだ来ていなかった。
【はーい!了解!『病院着いたら診察室来て!』先生が言っといてって言ってたよ?】
と返信した。
すると、すぐ返事が返ってきて、受信ボックスを見た。
【はーい!】
それを見て、何も返さずにケータイを閉じた。
先生は診察室で何を話すのだろう?
また、あたしの病気の症状悪化した?
そんなことないと信じたいけど・・・
信じ切ることがあたしにはできなかった。
その現状を全てが全て受け止めることがあたしにはできなかった。
あたしはもう、何がなんだかわからなくなって・・・頭が混乱して・・・ほんとに辛い。
ー 親とメールして1時間後 ー
コンコン、とノックする音が聞こえて、いつも通り、疲労感が出ても明るい声で「はい!」と返事をした。
ドアが開き、少し嬉しそうな表情をしたお母さんとお父さんが入ってきた。
「ごめんね?遅くなって・・・体調は?大丈夫?」
「うん!全然平気!でも、若干疲れやすくはなったって感じだけだよ?今は全然大丈夫だから!」
「そっ?」
お母さんとお父さんは横に置いているパイプ椅子に腰を下ろした。
なんであんなに入ってきた時、嬉しそうな顔をしたの?
先生には会ってきたの?
「お母さん、お父さん。先生には会った?」
「うん。会って来たよ」
お父さんが低い声を出してあたしに言った。
「そっか!なんか言われた?」
そう言うと、お互い顔を合わせてまた少し笑顔なった。
へ?・・・・
な、何??
「実はね?・・・・」
お母さんがゆっくり話出した。
「1ヶ月間、麻帆の様子を見て少しでも回復したようであれば、車椅子でだけど学校とか家とかで生活していいって!」
「えっ・・・・・」
声にならないほど、驚いた。
う、嘘でしょ!?
あたしが?車椅子生活だけど・・・
学校に行って勉強したり、家に帰れるってこと!?
「ほんとに?」
「でも、回復してきたら、だからな?」
「うん!あたし、頑張るよ!」
「そ?」
笑顔になったけど・・・お父さんが「でも・・・」と言って暗い表情をした。
「何?」
「走れないんだって・・・部活には戻れないだろうって・・・」
「ど・・・どう、して?・・・・」
もう・・・一生走れないって言われたような気がした。
なんで?なんで?・・・・
もう、部員のみんなと走ることができない?
そんなの考えられない・・・
「そっか・・・・まだ、走れないか・・・」
あたしの心の中を隠すかのように笑い飛ばした。
「麻帆・・・・」
「いいんだよ、別に・・・」
あたしの夢。完全に失われちゃったなぁ・・・
「今のでわかっちゃったんだ・・・お父さんが言った言葉だけで・・・」
あたしは静かに頷いた。