光ちゃん
思い出の湖
食事を済ませると、私は小さい頃によく遊んだ湖に足を運んだ。
何年ぶりだろう。この辺りの風景は昔とちっとも変わっていない。
「よくここで光ちゃんと遊んだな…」
一人、感傷に浸りその場に佇んでいた。
「あの…」
「きゃっ!」
いきなり声を掛けられ、びっくりして振り返えるとそこには男の人が立っていた。
「一緒に…やりませんか?…花火」
「え?」
急な誘いに戸惑っていると男は続けた。
「一人なのに買いすぎちゃって…ほら、まだこんなに!」
袋の中にはまだかなりの量の花火が残っていた。「今まで一人でやってたんだけど、なかなか終らなくって」
男は照れ笑いをしながらそう言った。
「あ、ああ…いいですよ」
特に断る理由もないので一緒に花火をやることにした。
「花火なんて何年ぶりかしら」
上京してからは見る機会はあっても自分ではやらなかった。
「俺も…」
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