四十九日間のキセキ
【第十八章】『発熱』
およそ一週間後の月曜日、この日の隼人はある決意をもって一人で病院を訪れた。

「調子はどうだ紗弥加」

「隼人来てくれたのね、ありがとう」

すると隼人は意を決したという感じで紗弥加に語り掛ける。

「今日は見舞いももちろんあるが、紗弥加にお願いがあってきたんだ」

「なによお願いって」

小首をかしげる紗弥加。

「俺たち高校時代付き合っていただろ?」

「そうね、それがどうしたの? 突然そんなこと言ってどうしたのよ」

「紗弥加の病気が治ったら俺とやり直してほしいんだ」

「どういうことよそれ」

この時の紗弥加はあまりの出来事に言葉の意味が理解できず、思わず聞き返してしまった。

「俺と結婚を前提に付き合ってほしいんだ」

「何言っているのよ、あたしは例えがんが治ったとしてもまたいつ再発するか分からないのよ」

「分かっている」

「胸だって手術で取っちゃってないのよ」

「そんなのどうでもいい。そんなの結婚しない理由にならない」

「だいいちあたし抗がん剤の影響で赤ちゃん産めないかもしれないのよ。跡継ぎどうするのよ」

「そんなの後々考えればいい」

嬉しい申し出であったが、それでも素直に受け入れることができなかった紗弥加。
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