四十九日間のキセキ
「患者さんが抗がん剤の副作用で亡くなってしまうことは稀ですが、もし肺炎などにかかってしまったら命に係わります」

「そんなこと言わないで助けてくださいよ」

悲しみの表情を浮かべすがるように坂本に懇願する香織。

「とにかく全力を尽くします」

こう言うしか他になかった坂本であった。 

その後紗弥加の病室へと向かった二人であったが、両親はその日一日中憂鬱な思いにさらされていた。

 数日後の日曜日、この日は葵と朝陽が紗弥加のもとに見舞いに訪れたが、依然として部屋には面会謝絶の札がかかったままであった。

「まだ会えないみたいね、どうする朝陽?」

「どうしようか、せめておばさんに会えればな?」

すると廊下での二人の会話が聞こえたのだろうか、病室から香織が姿を現した。

「おばさんいらしたんですね。こんにちは」

葵があいさつをすると朝陽も続く。

「こんにちはおばさん」

「こんにちは二人とも、今日も来てくれたのね」

するとすぐさま紗弥加の様子を尋ねる葵。

「それよりおばさん、紗弥加の様子はどうなんですか、どうして何日も面会謝絶の札がかかったままなんです?」

「ちょっとカフェに行きましょうか」

「紗弥加についていてあげなくていいんですか?」

朝陽が尋ねると香織は続けて応える。
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