四十九日間のキセキ
そしてそんな紗弥加の言葉に拓海は若干の怒りを覚えてしまった。

「今頃何言っているんだよお前の方から振っておいて、立ち直るのにどれだけかかったと思ってんだ」

申し訳なさそうに俯いた紗弥加は声を小さくしながらもさらに続ける。

「ごめんなさい、あたしも悪かったと思っているわ。そうだよね、あたしの方から振ったくせにもう一度やり直したいなんてそんなむしのいい話ないよね、その上婚約もしてお互いの両親に挨拶も済ませていたのに。ほんとに自分勝手だと思っているわ。でもね、あなたと別れた後あなたの存在がどれだけ大きかったか思い知ったの。それとももう新しい彼女いるのかな?」

「別にいないけど」

その一言に瞳を輝かせる紗弥加。

「なら良いじゃない、どうしてもだめなら友達からでも良いわ」

(そんな事言ったってまた振られるようなことがあったら辛いしな? そんな事になったら今度こそ立ち直れないぞ!)

「ダメかな? 今度こそいなくならないようにするから」

この時紗弥加は拓海の前からいなくならないと言い切る事が出来なかった。

「紗弥加にそこまで頼まれたら仕方ないな。分かったよ、そこまで言うのならもう一度付き合うか」

そうは言うものの拓海の中にはまだわだかまりがあった。それでも紗弥加が自分のもとに戻ってきてくれたのには嬉しくてたまらなかった。
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