四十九日間のキセキ
「お義父さん、お義母さんがいないようですがどうされたんですか?」

「実は今日来てもらったのはその事も関係しているんだ」

「どうかされたんですか?」

一体何だろうと不思議そうな表情で尋ねる拓海。

「実は今日来てもらったのは紗弥加の事なんだ」

「紗弥加さんがどうかなさったんですか?」

紗弥加の父親は神妙な面持ちで口を開くが、その口から放たれたまさかの言葉に衝撃を受ける拓海。

「実はな、紗弥加は亡くなったんだ」

その言葉に拓海は、あまりに突然の事に言葉を失ってしまった。

「君との婚約の後乳がんが見つかってな、実は君と別れた本当の理由もそれが理由だったんだよ」

「そんな事って、どうして僕に言ってくれなかったんですか!」

声を荒らげながら訊ねる拓海。

「これは紗弥加の意志なんだ」

「だからどうして」

激しい口調で尋ねるとさらに続ける孝之。

「抗がん剤治療をすると妊娠しにくくなる。左胸を取ってしまったから君に申し訳ないとも言っていた」

「そんなこと位どうってことないのに」

「それとこれはあくまでも私の予想だが、病気で苦しむ姿を君に見られたくなかったんだろう」
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