四十九日間のキセキ
「それでも教えてほしかったです。そうすれば僕も看病できたのに」

「ほんとに悪かった、出来るだけ紗弥加の意思を尊重したかったんだ。だけど病気に打ち勝つことが出来ずについに息を引き取ってしまった。病気というより抗がん剤の副作用に負けてしまったんだ」

「どういうことですかそれ」

激しい語り口で尋ねる拓海に対し孝之は悔しさをにじませながら続ける。

「抗がん剤の副作用で命を落とす人が稀にいるそうだ、紗弥加はその中に入ってしまったんだよ。先日四十九日法要を終えたところだ。母さんは娘が自分より早く亡くなってしまったショックで寝込んでしまってな、ずっと付き添っていたから看病疲れもあったんだろう、一度は起き上がれるまで元気を取り戻したんだが四十九日法要の準備やなんかで終わったあとまた寝込んでしまった」

「そうだったんですか」

この時拓海は、紗弥加が亡くなったショックからこれしかいう事が出来なかった。
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