四十九日間のキセキ
「どうして、あなた拓海さんのこと好きなんでしょ?」

「そうだけどだからこそ別れたいのよ。だってあたしのために看病に付き合わせたくないし、万が一結婚したとしてもその時にはもう左胸はないかもしれないのよ。なによりあたし抗がん剤で妊娠しにくくなるかもしれないのよ」

「そんなことくらいで別れてしまうの、拓海さんはそんなことくらい何とも思わないんじゃないの?」

「あたしが嫌なの、余計な負担をかけてしまうようで」

「後悔するんじゃない?」

「いいのもう決めたことだから。だからもしお父さんたちの所に連絡が行っても知らないふりをしてほしいの」

紗弥加の意志が固いと感じた香織はがっくりと肩を落とす。

「仕方ないわね、分かったわ」

「あともう一つお願いがあるの」

「何言ってみなさい」

「病院を転院したいのよ」

突然の願いに何故かと思う孝之。

「どういうことだそれ、この病院に不満でもあるのか?」

「ううん不満なんか一つもないわ。ただ静岡の病院に移って向こうで治療をしたいだけなの。それならお父さんたちもお見舞いに来やすいでしょ?」

「そういう事なのね。別にいいのにそんなこと気にしなくて」

「そんなわけにいかないよ、だって今だって来なくていいって言ったのに来てくれたじゃない」

紗弥加が申し訳なさそうに言うと、その言葉に香織が応える。
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