四十九日間のキセキ
「お待たせいたしました。ご相談があるということですがどういった件でしょう?」

秋元の尋ねる声に口を開く香織。

「先生お世話になっております。実はこの子が転院をしたいと言いまして」

「それはどういうことですか、病院に何か落ち度でもありました?」

「いえそういうことではありません」

 ここで紗弥加が自分の口から説明する。

「病院に落ち度があるとかではないんです。ただ静岡の実家近くの病院に移りたいと思いまして。そこなら両親もお見舞いに来やすくなるので」

「そういう事でしたか分かりました。でしたらすぐに紹介状を書きましょう」

「よろしくお願いします」

 秋元が病室を後にすると香織が紗弥加に対し語り掛ける。

「じゃああたしたちはそろそろ帰るわね」

「うん今日はありがとう。だけどこれから静岡まで帰るのは大変でしょ、どこに泊まるの?」

「それなんだけど、あなたのマンションに泊まらせてもらっていいかな?」

 香りが尋ねると快く了解する紗弥加。

「良いわよそのくらい自由に使って」

「ありがとう、そうさせてもらうわね」

「何よ礼なんて水くさい、わざわざ遠いところ来てくれてお礼言うのはこっちじゃない」

翌日父親の孝之は漁があるため静岡に帰ったが、母親の香織は東京に残り紗弥加の身の回りの世話をすることになった。

 数日後、この日は静岡の病院に転院することになり、東京の病院を退院しマンションも引き払い新幹線へと乗り込んだ。
< 15 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop