四十九日間のキセキ
拓海が帰ったのを確認すると孝之も紗弥加の入院する病院へと足を運んだ。

病院に着いた孝之が紗弥加の待つ病室に向かうと紗弥加に声をかける。

「具合はどうだ紗弥加、元気にしてるか?」 

その声に即座に反応したのは先に来ていた母親の香織であった。

「あらお父さんどうしたの?」

「かあさん、紗弥加はどうしてる?」

そこへ半分閉まりかけたカーテンの陰から返事が聞こえた。

「元気にしているよ、それよりどうしたの? 来るなら一緒に来ればよかったじゃない」

「ほんとは来る予定じゃなかったんだけどな、紗弥加、入院治療を選んで正解だったよ」

「それどういう事?」

「実はさっき拓海君がお前を探しにうちに来たんだ。ずいぶんと落ち込んでいたぞ、自分に何か落ち度があったんじゃないかって気にしていたよ」

「そう、やっぱり実家にまで来たのね。それでどうしたの?」

「知らないふりして帰ってもらった。なんか彼のことが気の毒になってしまったよ」

ここで香織が紗弥加に語り掛ける。

「ねえ紗弥加、ほんとにこれでいいの? これでは拓海さんがあまりにもかわいそうで、彼には何の落ち度もないのよ、それなのに結婚式目前で突然別れてしまうなんて」「いいのこれで、こうする以外に方法が見つからないもの」

そこへ割って入ったのは父親の孝之だった。
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