四十九日間のキセキ
「だから拓海君にも病気のことを話したらどうだ? 彼なら一緒に病気と闘ってくれると思うぞ!」

「それはこの前も言ったじゃない、彼に負担をかけたくないの」

「彼なら負担とも思わないと思うがな?」

「もういいじゃないこのことは」

「分かったよ、仕方ないよなお前が一度決めた事なんだから」 

そんな三人のもとへ主治医の坂本がやってきた。

「どうですか奥山さんお加減の方は。ご両親も来ていたんですね」

その声に挨拶をする香織。

「お世話になっております先生」

香織が挨拶を言い終えると坂本の質問に応える紗弥加。

「今のところ特にどうってことはないかな」

「それならよかった。ご両親もいらしたならちょうどよかった。検査の説明をしますね」

「分かりました、お願いします」

「奥山さん、残念ですがやはり切らなければいけないようです」

「そうですか、やっぱり手術はしないといけないんですね、東京の病院でも切らなければいけないかもしれないことは言われていましたから何となく予想は出来ていました」

「そうだったんですね」

 紗弥加はこの時坂本にあるお願い事をする。それは東京の病院でもした願いと同じことだった。

「先生、手術をしなければいけないことは分かりました。でもできるだけ温存するようにしてください。お願いします」

そこへ孝之も続く。

「私たちからも願いします。この娘まだ二十八歳なんです! 先日負担をかけたくないからと自ら婚約者と別れてしまいました。これでもし胸までなくなってしまうとなると娘があまりにもかわいそうで」

「分かりました。できる限り温存するようにしてみましょう」
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