四十九日間のキセキ
「一言に乳がんと言ってもいろんなタイプがありまして、発見時腫瘍が小さくても残念ながら亡くなってしまうタイプのものや、逆に大きくなってしまってから見付かった腫瘍でも治癒したのちその後生存できるタイプのものもあります」

ここまで聞いたところで香織の心は不安な気持ちに支配されてしまった。

 そして更に坂本の説明は続く。

「紗弥加さんの場合前者の可能性が大きいかと」

「どういうことですかそれ! 紗弥加は助からないということですか?」

香織が叫ぶような声で尋ねると、それをなだめるように落ち着かせる坂本。

「落ち着いてくださいお母さん、まだ亡くなると決まったわけではないですから。ただ腫瘍が思ったよりも大きくなっているようで、すでにリンパ節への転移も始まっているようです」

「それってあの子は助からないということですか? そんな事ないですよね」

「安心してください。わたしたちも全力を尽くしますから」

そうは言うもののこの時の坂本に紗弥加の病が治ると言い切ることは出来ずにいた。

 この時孝之は必死に気持ちを落ち着かせようとしながらも坂本に頼み込む。
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