四十九日間のキセキ
「先生とにかく娘をお願いします。大切な一人娘です、あの子を失ったら私たちはどうしたらいいか」

「全力を尽くします」

今はそれしか言えない坂本であった。

 翌日から紗弥加に対するホルモン療法や化学療法が始まった。これは手術前にがん細胞を小さくするためであった。

そんなある日紗弥加の両親が見舞いにやってきた。

「紗弥加元気にしている? どう具合は」 

香織の尋ねる言葉に応える紗弥加。

「まあまあかな?」

その応えに反応したのは孝之であった。

「そうかまあまあか」

「ねえあれからどう、拓海うちに来たりしてない?」

 その問いかけに応えたのは香織であった。

「あれからは一度も来てないかな、でも留守にしているときは分からないけど」

「そう、だったら家に帰っても大丈夫かな?初めにこの病院に来た時先生に通院での治療にするかそれとも入院するか聞かれたでしょ、通院で済むならそのほうがお金かからなくて済むじゃない」

「そうね、でも確かに拓海さんはあれから来てないけど何度か電話は掛かってきているのよ。万が一またうちに来た時のことを考えたらここにいたほうがいいんじゃない? それともずっとここにいると退屈?」

香織の言葉に応える紗弥加。
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