四十九日間のキセキ
「いつもお母さんたちがこうしてお見舞いに来てくれるからそんな事ないけど、でもいいの? 入院費結構掛かるんじゃないの?」

「そうかもね。でもそれほど心配はいらないわ、保険にも入っていることだしね」

「ありがとうお父さん、お母さん」

 その後病室を後にした両親が一階の外来待合室を通りかかると、ある人物に声をかけられた。

「おばさん? おじさんもご無沙汰しています」

 声に振り向くとそこには紗弥加の高校時代の元彼の望月隼人の姿があった。

「もしかして望月君? 随分大人になっちゃって、すごい見違えちゃったわ」

香織が言うと隼人が続ける。

「どうしたんですかこんなところに二人そろって、病棟の方から来たようですけどどなたかのお見舞いですか?」

「ちょっと娘がね」 

ここでとっさに声を飛ばしたのは父親の孝之であった。

「待て! こういう事をあまりぺらぺらとしゃべるな」

「良いじゃない別に、どうせいつかは分かることよ。それにお友達にもお見舞いに来てもらったほうがいいじゃない、お見舞いに来るのが両親だけって寂しいでしょ?」

「確かにそうだな? 望月君、暇な時でいいから娘の見舞いに来てやってくれないか」 

この言葉に疑問の表情を浮かべながら尋ねる隼人。
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