四十九日間のキセキ
「ねえお父さんお母さん、あたしずっと入院しているって言ったけど、もう少し良くなって先生の許可が出たら退院してもいいかな?」

「どうしたの突然」

「やっぱりずっとここにいるのも退屈なのよ、それに入院費のことを考えたらやっぱり大変でしょ? 拓海にももう来ないように言ったなら大丈夫よね」

「拓海さんのことはあれだけ言ったからもう来ないと思うわ。それと考えたんだけどもし来てしまったとしても自分の部屋にいれば気付かないんじゃないかな?」

「だったらいいじゃない帰っても。入院費だってバカにならないでしょ?」

「確かに拓海さんがうちに来てしまう心配はなくなったけど、入院費のことは心配しなくてもいいのよ、保険だっておりるしその気になれば貯金だってあるわ。でも確かにずっとここにいるのも退屈よね」

この時香織の脳裏にある疑問が浮かんだ。

「だけど先生が通院でもいいって言ったのは手術が始まるまでって言ってなかった?」 

この問いかけに紗弥加は当然とも思える言葉を放った。

「確かにそう言ったけど病気がよくなればいつかは退院できるんだからいいんじゃない?」

「それもそうね、先生に後で聞いてみてあげる」

「ありがとうお母さん」

この時思い出したようにある報告をする紗弥加。

「そういえばこの前隼人が来てくれた時にちゃんとお礼言っておいたよ」

「そう何か言っていた?」

「気にするなとかいろいろ」

ここでそれまで二人の会話を聞いていた孝之が話に入ってきた。

「彼もいろいろと気を使ってくれたみたいだな」

「そうみたい。彼には感謝しなくちゃ」

 その後もしばらくの間親子三人で会話を楽しみ、この日の夕方両親は帰っていった。
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