四十九日間のキセキ
「いいじゃない迷惑かけたって」

「でもあたし治療の影響で赤ちゃん産めなくなっちゃうかもしれないのよ」

「それがどうしたって言うの? あなたの別れた彼だって別に赤ちゃんが欲しいがためだけにあなたと婚約したわけじゃないんじゃないの?」

「そうかもしれないけどさぁ、手術で胸が無くなっちゃったのよ」

「そんなことくらいであなたの彼はあなたの事嫌いになると思ったの? あなたたちの愛情ってそんなものだったの」

この時の葵は大粒の涙を流していた。

「そんな事ないけど」

「あなたも彼にそばにいてくれた方が治療の励みになるんじゃないの?」

「確かにそうかもね、ごめんね葵たちにまで余計な心配かけちゃって」

「だからそれ。別にあたしたちに謝ることないよ」

そこへ隼人も声をかけてくる。

「そうだぞ、何も好き好んで病気になったわけじゃないんだ。だからそんな謝る必要ないんだぞ」

その声に改めて礼を言う紗弥加。

「ありがとう二人とも、あたしの事を心配してくれているんだよね」

「当り前じゃない。あたしたち友達でしょ」

すると隼人が心配な表情を浮かべながらも最も気掛かりなことを紗弥加に尋ねる。
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