四十九日間のキセキ
「お父さん口には出さなかったけど彼のこと気に入っていたのよ」

「ありがとうお母さん。お父さんも彼のこと気に入ってくれてありがとう。葵もそのあと一緒にいてくれたほうが治療の励みになったんじゃないかとも言ってくれたわ」

「そう、葵ちゃんはほんとあなたの事を想って言ってくれたのね」

「ほんとそう思う。あたし良い友達をもって幸せだよね」

「そうね、いいお友達をもってお母さんもあなたが羨ましいわ」

「そう言ってもらえるとあたしも嬉しいな」

その言葉と共に柔らかな笑みを浮かべる紗弥加。

 およそ二週間後、この頃になると紗弥加の身にも抗がん剤の副作用が表れ始め吐き気や嘔吐を繰り返すようになった。そのため母親の香織も紗弥加に付き添い、ほとんどの時間を病院で過ごすようになった。

「ごめんねお母さんこんなことになって、あたしの世話で大変だよね」

「そんなこと良いのよ気にしなくて、病気になってしまったものは仕方ないじゃない。それにあなたが悪いわけではないわ、一番つらい思いをしているのはあなた自身でしょ?」

「そうだけどさぁ、お父さんもお母さんがいなくて大変なんじゃないの?」

「いいのよあなたはそんなこと気にしなくて、お父さんも気にしてないと思うよ。あなたはそんなこと考えなくていいから病気を治すことだけを考えなさい」

「分かった、お母さんたちのためにも一刻も早く病気に勝つね」

「それは違うわよ紗弥加、何よりも自分のために病気に勝つの」

「そうだね」
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