四十九日間のキセキ
「すまない拓海君、あともう一つだけ条件を受け入れてほしいんだが聞いてくれるか?」

「何でしょう?」

「最近は結婚式はせずに籍だけ入れるのが流行っているようだが、小さくても構わないから結婚式だけは挙げてほしいんだ。この子にウエディングドレスだけは着させてあげたくてな」

実は同じことを考えていた拓海。

「分かりました。実は僕も同じことを考えていました。最近ではドレスを着て写真だけ取るようなカップルもいるそうですが、それでは味気ないと思っていたんです」

ところがここへ紗弥加の声が飛んできた。

「待ってよ! あたし式まで挙げてくれなくてもいいわよ。籍だけ入れればそれで充分」

「そんなこと言うな、費用のことは心配しなくていいから。もし足りなければうちからもいくらかは出してやるから」

孝之が言うが、それに対し拓海は遠慮してしまう。

「いいえそういうわけにはいきません。僕もいくらかは蓄えがありますのでまずは僕たちだけで頑張ってみます」

「そうか、ならそうしてみるといい。どうしても予算に折り合いがつかなかったら連絡しなさい」

「ありがとうございます」

 その後年が明けると拓海の実家にもあいさつに行き、正月明けから本格的に式場探しが始まった。 

そして様々な式場を廻った後、紗弥加のジューンブライドに憧れるとの一言により式は六月となった。
< 6 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop