四十九日間のキセキ
隼人がふと時計を見ると、思いのほか時間が経過していることに気付いた。

「もうこんな時間か、帰らないと」

その言葉に寂しさを覚える紗弥加。

「もう帰るの?」

「そうだ、紗弥加も少し休め」

「分かったわ、また来てね」

「もちろんだ、また来てやるからな。じゃあな」

こうして隼人は病室を後にした。隼人が病院を後にして数分後、席を外していた香織が紗弥加のもとに帰ってきた。

「望月君帰ったみたいね、楽しかった?」

「おかえりなさいお母さん」

「ただいま」

「ねえお母さんこれ見て」

嬉しそうに弾んだ声で頭にかぶっているニット帽を指さす紗弥加。

「なにそれ可愛いじゃない。どうしたの?」

「隼人がプレゼントしてくれたの、朝陽から副作用のこと聞いたんだって」

「そう? 今度望月君に会ったらよくお礼を言っておかなきゃね」

ところがその日の夕方、香織が帰ろうとナースセンターの前を通りかかると一人の看護師に声をかけられた。

「奥山さんお待ちください」

「何でしょう?」

「坂本先生がお話があるそうなので来ていただけますか」

「分かりました」

こうして相談室に案内される香織。
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