四十九日間のキセキ
「ところで紗弥加、また抗がん剤の治療始まるんでしょ。いつから?」

その問いかけに不安げな表情で俯いてしまう紗弥加。

「明日からなの。また辛い治療が始まると思うと今から憂鬱で」

「何言っているの、辛い治療に耐えて早く病気を治すんでしょ?」

「そうなんだけどさぁ?」

「がんばって、あたしたちも応援しているからね」

「ありがとう葵」

葵の励ましに応える紗弥加であったが、この時一時退院し少しはリフレッシュできたとは言え、治療に疲れていた紗弥加は言われなくてもとっくに頑張っているのにこれ以上どう頑張ればいいんだと思ってしまった。

 そして翌日、抗がん剤治療の第五クールが開始されることとなった。

「では始めますね奥村さん」

「はい、今日からまたよろしくお願いします」

こうして点滴による抗がん剤の治療が開始された。

その日の午後、いつものように隼人が見舞いに来てくれた。

「隼人いらっしゃい、今日も来てくれてありがとう。昨日は朝陽と葵が来てくれたのよ」

「そうだってな? 昨日は一緒に来てやれなくて悪かったな」

するといつものように香織は席を外す。

「じゃああたしは席を外しているわね」

「そんなお気遣いなく。おばさんもここにいらしてください」

「良いのよ気にしなくて、若い人同士で話すこともあるでしょ? じゃあ望月君ゆっくりしていってね」

「いつもすみません」

こうして香織は部屋を後にしていった。

すると申し訳なさそうに紗弥加に尋ねる隼人。
< 83 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop