四十九日間のキセキ
翌朝、紗弥加のもとに行った香織はいつものように挨拶を交わす。

「おはよう紗弥加」

「お母さんおはよう。今日も来てくれてありがとう」

「良いのにそんなに毎回毎回礼なんてしなくて。あたしたち親子なんだから」

「だけどほんとありがたいんだもん」

「まあいいわ」

 笑みを浮かべながら一言言うと香織は更に続ける。

「そうだ、今日は午後からお父さんも来てくれるそうよ」

「ほんと? うれしいなぁ」

今までの紗弥加であればこれほど父の存在が大きくなったことはなかったが、病気になった今では見舞いに来てくれるだけで嬉しい。そんな存在になっていた。

 その日の午後、約束通り孝之が紗弥加のもとに見舞いにやってきた。

「紗弥加久しぶりだな」

「お父さんいらっしゃい。来てくれてありがとう」

笑顔で礼を言う紗弥加に、同様に孝之が笑顔を浮かべながら続ける。

「たまにはな、それよりなかなか来てやれなくてごめんな」

「良いわよ別に、お父さんはいつも仕事で大変なんだから」

「元気にしていたか?」

「元気にしていたわよ」

「望月君たちが何度も見舞いに来てくれているんだって?」

「そうなの」

「それだけではなく紗弥加のためにテレビカードを買ってきてくれたそうじゃないか」

「そうなの。あたしも嬉しいんだけどなんか申し訳なくて」

「そうだな、紗弥加は良い友達に恵まれて幸せだ」

「あたしもそう思うわ」
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