四十九日間のキセキ
その後入院することになった紗弥加は病室に案内されると一度談話室に向かい、スマートフォンを取り出し実家に電話をかける。

『はい奥村ですが』

「お母さんあたし、紗弥加」

この時の紗弥加の声は、先日拓海とともに実家に帰った時とうって変わってあまりにも暗く沈んでいたため。香織は何かあったのではと心配になってしまった。

『どうしたの突然。なにかあった?』

「どうしようお母さん、あたし乳がんになっちゃった」

あまりに突然の一言に香織は驚いてしまった。

『ほんとなのそれ、でも治るのよね?』

「治るって信じたい。でも先生は胸を取ったほうがいいって言ったけどあたしはできるだけ残すようにお願いしたの」

『そう、確かにあなたの歳で胸が無くなってしまうのは辛いものね。結婚も控えていることだし、でもそれで大丈夫なの?』

香織が尋ねるが、紗弥加自身にも病気が治るのかはっきりとは分からなかった。

「分からない。先生ははっきりと言わなかったけどあたし自分でしこりに気付いて病院に行ったの。自分で気付いたということは結構大きくなっているのよきっと」

『とにかくそっちに行くわね、なんていう病院なの?』

ところがここで紗弥加は両親に負担をかけまいと思ってしまう。
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