ゆとり社長を教育せよ。
10.俺を信じて
相変わらずモデルルームのような内装の、広いリビング。
そこに通された私が立ったままでいると、車のキーを無造作に棚に放ってソファに腰かけた社長に、おいでおいでと手招きされた。
……ほんと、うれしそう。
今まではそういうの表面に出さない、余裕のあるオトナな男性が好きだったんだけど……
ここまでわかりやすく気持ちを表現されるのも、意外に悪くないかも。
そんなことを考えながら、今までの私なら絶対にありえない従順さでその隣に座ると、肩を抱き寄せられて耳朶に軽くキスをされた。
「あー、超いいにおい。超かわいい。超すき。」
「……なんにでも“超”を付けると、バカっぽいですよ? 社長」
「やめて下さいよ。こんな時に社長とか呼ぶの」
まあ、確かに、そっか。
でも、なんだかそれ以外は呼びづらい。会社では敬って(心から敬ったことは一度もないけど)、プライベートでは年下の彼氏。
結構複雑だわ……この関係。
「ミツル……でしたっけ、名前」
「正解。高梨さん限定で呼び捨てにしていいですよ」
「……それなら“高梨さん”もどうにかして?」
彼の肩にもたれながら、上目遣いにそう言ってみる。
すると、大きな手が私の頭を包み込んでさらに自分の方へ引き寄せ、髪に触れた唇が、私の名前を呼んだ。