ゆとり社長を教育せよ。
そうだ……浮かれすぎて忘れていたけど。
半年の間にヒット商品を生み出さなければ、充は……
「だから、明日のデートのテーマは“チョコ食べ尽くし”」
「研究のため?」
「うん。いやっていうほど食べさせる予定だから、覚悟しといて?」
最後にはにっこり笑った彼だったけど、私の心にはぽつんと影が落ちていた。
本当ならお尻叩かなきゃいけない立場なんだから、私がこんなんじゃダメなのに。
食事中もそのことが頭から離れず、せっかく作ってもらったパスタが一向に減る気配がない私の手元を見て、テーブルを挟んで向かいに座る充は苦笑しながら言った。
「……美也は、俺がヒット商品なんて生み出せるわけないって思ってるんでしょ」
「え……?」
「だって、もう離れること確定みたいな顔してるから」
図星をつかれて、私は視線を落とす。
充のことは好きだし、もちろん頑張って欲しいけど……仕事中の彼のことを考えれば、明らかに不安要素の方が多い。
ただの秘書でいられたなら、“やってやろうじゃない”くらいに思えたのに、これだから恋愛は厄介だ。
心の支えになるはずの相手の存在が、逆に心を脆くしてしまうことがあるから……
「……俺、美也を自分の秘書にしたいがために、やる気ない振りをしてたフシもあるんだけど」
充のそんな言葉に、一気に我に返った。
「なにそれ? やる気ないふりって……」
「あー、まぁそれはのちのち……」
ものすごく聞き捨てならない台詞だったのに、彼ははぐらかして話を続けた。
「もともと自分から動くのって苦手だし、責任ある仕事も向いてないと思うし、できれば楽してお金稼げればいいなって思ってた。社長なんて、親のエゴでやらされてるだけだって」