ゆとり社長を教育せよ。
11.乙女の弱み
「――美也」
ん……社長の声、だ。なんで、勝手に呼び捨てにしてるのよ。
「美也ってば。起きてよ。キスしちゃうよ?」
「……ダメに決まってる……でしょ。ここ、会社の中……」
「お。なんかすげーいい夢見てる」
夢……? あ、そっか。
さすがのゆとりくんでも、社長室でキスを迫るなんてこと、さすがにしないわよね――
「……俺は別に、ココでも構わないけど?」
なんでだろう、そんな甘い声で囁かれると、身体が疼いちゃう――――って。
ぱちっと目を開けると、飛び込んできたのは充の顔の、どアップ。
私はベッドに寝ていて、彼はどうやらその上に乗っているらしい。
「おはよ」
朝からまぶしい笑顔を向けられて、きゅんと鳴る心臓。
そうだ……私、この人と付き合うことになったんだった。
それで、昨日は二度もキスをして……
「お、おはよ……」
夜が明けてみるとなんだか恥ずかしさが増していて、私はろくに目も合わせられずに、彼の身体をよけつつ上半身を起こす。