ゆとり社長を教育せよ。
*
「うん……さすがって感じ。甘さよりカカオ感強めね」
「美味しいけど大衆向けではない、か……」
まずはじめにやってきたのは、外観から高級ブランド店みたいな、高級チョコレートの専門店。
ガラスケースの中に並んだチョコをいくつか試食させてもらったけれど、ひと粒何百円っていう世界はちょっと私たちの目指すものとは違う。そういう結論に達して、店を出る。
小回りがきくようにと電車と徒歩でやってきた街は秋物の上着では少し寒くて、枯葉の舞う景色はどこか寂しい。
「寒いなー。ホットチョコレート買えばよかった?」
でも、そう言った充に手を取られると、胸の辺りからぽかぽかしてきて、急に世界が変わったように見えて。……って、これまたかなり恥ずかしい思考だけど、いいんだ。
「ううん、平気。次はどこへいくの?」
気分はさながら恋愛小説のヒロイン。
すっかり乙女モードの私は、はにかみながら彼の手を握り返す。
「北海道物産展」
「あ! 私、あれ好き! ポテチにチョコついてるの」
「まじ? ……俺はないなー、あれ」
ひとつひとつ、お互いの合うところ、合わないところを知りあっていくこの感じ。
隣に誰かがいてくれることの安心感。
ただ歩いているだけなのに、言葉では上手く表現できないしあわせで心が満たされていく。