ゆとり社長を教育せよ。


その後も色々なお店をまわり、文字通り甘ったるい時間を過ごした私たち。

結局商品研究よりもデート色が強くなってしまったような気がするけれど、今日は休日だし……なんて、以前の私に激しく怒られそうな甘い考えで自分を許してあげることにして。



「……すごい、どれも可愛いし美味しそう。どうしよう、選べない」



最後に充が連れてきてくれたのは有名ホテルのデザートブッフェ。

お皿を持った私は、目の前に並べられた色とりどりのスイーツに目移りしてしまう。


「俺もー。でも、二人で分ければ色んな種類食べられるんじゃない?」

「あ、見て! チョコレートファウンテンもある!」

「はは、すげーはしゃぎよう。よかった、美也をここに連れてきて」


……あ、またその心から嬉しそうな笑顔。それは、ここにあるどんなスイーツよりも、私にとっては大好物。

“ゆとりスマイル”と評してイラッとしていたのが遠い昔のことのようだ。

……恐るべし乙女パワー。


二人そろってお皿にスイーツを一杯に乗せ、一旦テーブルに戻ると充が私に聞いた。


「飲み物取って来るけど、何がいい?」

「ありがとう。ええと……紅茶かな。ストレートで」

「りょーかい」


席を立った彼の背中を乙女な眼差しで見送ってから、スイーツのお皿に向き直る。

どれから食べようかな……なんて、幸せすぎる悩みにどっぷり浸ろうとしたとき、バッグの中でスマホが震えていることに気付く。

何も考えずにバッグからそれを取り出し、画面を見た私は目を見開いて固まった。



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