ゆとり社長を教育せよ。
14.本当の黒幕
「意外とあっさりだったな……」
充と別れたその日の夜。
自宅のベッドにどさっと腰を下ろしてそう呟いた私。
……正直、もうちょっと食い下がってくれると思ってた。
誰だって、自分の身の安全が一番に決まってる。
それはよくわかっているけど、あまりにすんなり受け入れられちゃったのが、ショックだった。
「ダメだ。乙女モード、オフらなきゃ……」
気持ちを切り替えるように立ち上がり、大好きなアイスでも食べようかなとキッチンの小さな冷蔵庫に近付いた時、バッグの中にあるスマホがピリリッと音を立てた。
まさか、また非通知から……?
アイスを諦めてバッグを探り、予想通りの表示にはもうあまり驚かなくなっていた。
「……もしもし」
『加地充とは別れたか?』
……相変わらず、ボイスチェンジャーを使った気味の悪い声。
別れたわよ! アンタの言う通り! まだ何かあるの!?
そう言いたいのを堪え、私はつとめて冷静に尋ねる。
「はい、言われた通りにしました。もう加地社長に危険はないですよね?」
『そうか。それならいい。もうお前に用はない』
「ちょっと、何よそれ……!」