ゆとり社長を教育せよ。


これを吹き消して、部屋が真っ暗になったところで逃げられるかしら……?

そんな私の思いを見透かしたように、テーブルの反対側に座った千影さんが微笑みながら言う。


「逃げちゃだめだよ? これから、プレゼントもあるんだから」


プレゼント……? こ、怖すぎる。

まさか、私を一生自分の側に縛りつけておく拘束具とかじゃないでしょうね……?


「ほら、早く」


……充、まだかな。それとも、この場所がわからないのかな。

このままじゃ私、千影さんに鎖で縛られちゃう……

そう思いながらも、仕方なくふうっと息を吹きかけて、ろうそくの火を消したそのとき。


――ピンポーン。

ぱっと部屋が暗くなるのと同時に、部屋に響いた音。

どうやら誰かがこの部屋のチャイムを鳴らしたらしい。

もしかして、充……?

胸に差した一筋の光。けれど千影さんの一言で、それはすぐに消えてしまう。


「プレゼントが来たみたいだ」


嬉しそうに立ち上がった彼は、部屋の明かりをつけると玄関の方へ向かう。

今なら少し自由に動けそうだけど、玄関がふさがれてるんじゃ逃げようがない。

ここ、五階だから、ベランダから落ちたら死ぬよね……

それでもいちおう自分の目で高さを確認してみようと、私が窓の方へ近付くと。


「な、何なんだキミたちは!?」


突然激しく動揺した千影さんの声が聞こえて、そして次の瞬間、張りつめた私の心をふっと緩ませる、聞き慣れた声がした。



「ゆとり急便です。お荷物をお預かりしに参りました」



< 138 / 165 >

この作品をシェア

pagetop