ゆとり社長を教育せよ。
すっかり疲れ切った私たちは、順番にシャワーを浴びると早々に寝てしまうことにした。
……のだけど。
五年間彼氏のいなかった私の部屋に、男物の服があるはずもなく。
一日身に着けていた充のシャツとパンツは速攻で洗ってただいま部屋干し中なわけで。
「……ねえ、寒いから早くこっち来て」
と、甘えた声で言うのは私ではなく、ベッドの上に横になった状態で、腰にタオルだけを巻きつけている彼である。
何これ? 拷問? ……って、思考が男だって、私!
ぺち、と自分のおでこを叩いてなんとか煩悩を抑えると、できるだけ充に触れないよう注意しながら彼の隣に滑り込む。
もちろん顔は、充のいる方とは反対向き。
「美也、いま何時?」
「今……?」
枕の下に手を滑り込ませて、そこに置いてあったスマホの画面で時間を見る。
「23:53」
「おー、ぎりぎりセーフ。美也、ちょっとこっち向いて」
「……なに?」
ごろんと寝返りを打てば、至近距離に充の整った顔。
まだ少しだけ濡れた彼の前髪からは、いつも私の使ってるシャンプーの香りがした。
それが新鮮で、気恥ずかしくて、耳の奥で自分の鼓動がどんどん大きくなるのを感じる。
そんな私の目を真っ直ぐに見つめて、充は静かに言った。
「――誕生日、おめでとう」