ゆとり社長を教育せよ。
15.新商品の行方
翌日、先に家を出た充とは少し時間をずらして出勤した私は、いつもより緊張した面持ちで秘書室までの廊下を歩いていた。
凜々子さんに、負けたくない――。
その意志をさらに強固なものにするため、いつもは下ろしている髪を高く結った。
きっと、もとよりさらに目がつり上がってキツイ顔になっているんだろうけど、そうでもしないと彼女と向き合って戦う勇気が出なそうだったから。
「――おはようございます」
開いた扉の先には、今日もバッチリメイクされた瞳をパソコンに向けている、凜々子さんただ一人。
先に出勤した充が、他の二人には何か仕事を与えておくからと、この状況を作ってくれたのだ。
凜々子さんはパソコンから目を上げると、ぎし、と身体を椅子の背もたれに預けて、入り口の側で立ったままの私に言った。
「……気付いちゃったんだ。美也ちゃん」
全く悪びれる様子もなく、口元に微笑さえ浮かべている彼女を見て、肩から下げたバッグをつかむ手にぎゅっと力が入る。
……私に対してこんな態度ってことは、本当に、凜々子さんだったんだ。
千影さんの口からは聞いていたけど、何かの間違いなんじゃないかって、心のどこかで思っていたのに……
「……どうしてなんですか? 私、凜々子さんの気に障るようなこと、何か……」
「何か……んー、そうねぇ。しいて言えば、美也ちゃんが存在してること自体が、かな?」
いきなり心に重たくのしかかる言葉だった。
凜々子さんは、どうしてそんなに私を……