ゆとり社長を教育せよ。
*
「……社長。いい加減教えてください。新商品の中身」
「ん。いーよ。はいコレ」
会議後の社長室で、私はその役員大絶賛だったという商品の企画書を見せてもらった。
一体どれだけ凝ったチョコレートなんだろう……と、ワクワクしながらそれに目を通す。
「商品名……“男のチョコバー”……ですか」
なんか、単純なネーミング。
男性向け商品ってことかな?
「とにかくこだわったのは重量感。美也とチョコ食べ尽くしデートしたときに思ったんだけど、俺、甘党だからあれだけ食べてもまだ余裕って感じだったんだよね。
ほら、今人気のチョコって結構上品系じゃん? だから、なんとなく物足りなかったのかなーと思ってさ」
充がそう言って椅子から立ち上がり、私の手にある企画書を後ろから覗く。
「……なるほど。でもコレすごいですね。一本食べただけでその日のカロリーオーバーな感じ」
「それくらいやらないとインパクトないし」
へええ……充のくせに、ちゃんと考えてやってるんじゃない。感心感心。
でも……でもでもでも。
ひとつだけ、気になることが。
「この商品名に……なんとなくイカガワシイ響きを感じるのは私だけでしょうかね」
「……あー。なんとなくわかるけど。でもさ、それって美也が欲求不満だから余計そう思うんじゃない?」
最後の方だけ、わざと声を潜めて耳元に唇を寄せた充。
そんなわけないでしょ! ……と、否定したいところだけど、そんなわけあるのだ。
女にだって性欲はありますから、散々じらされて、おおいに不満です。