ゆとり社長を教育せよ。
「これが全国のお茶の間に流れるの……? 私、親に何て言おう」
「いくら顔映ってないって言っても、これは腹立つ……仕事だからしょうがないけど」
数十秒の映像が終わると、ため息をついて再びリモコンを持ち、普通のテレビ番組に切り替えた充。
すると、たまたま映った情報番組で、タイムリーすぎる人物の映像が流れていた。
「高柳じゃん……相変わらずどこにでも出るなー」
「ほんとだ……マネージャーと電撃結婚だって。へぇ……」
充の隣に腰をおろし、何気なく呟いてから、ん?と首を傾げる。
マネージャーと電撃結婚……?
充と顔を見合わせ、二人でもう一度画面をじっと見つめていると。
『ええ……やっと自分を一番大切に想ってくれてる人の存在に気が付けたというか。彼女のがいないと駄目だっていうことを改めて思い知ったと言うか』
事務所の前で報道陣に囲まれた高柳さんが、はにかみながらそう答える様子が映し出されていた。
「……じゃあ、本当になんだったのよ、あのキスは」
「もしかして……マネージャーを嫉妬させるためとか?」
「あ、あり得る……。あの不思議系俳優ならやりそう……」
全く、なんて人騒がせなイケメンなんだろう。
そう言う意味では確かに、芸能人に向いてるのかもね……
なんだかどっと疲れた気がして、充の肩にコテンと頭をもたれる。
そんな私の髪に軽くキスをした充は、気分を変えるように明るく言った。
「そろそろ出かけよっか。デート、久々だし」
「そうだね……テレビなんか見てたらまた何度もあのニュースやりそうだし」