ゆとり社長を教育せよ。
17.出逢いの場所で
身支度を整えると、オープンじゃない方の車で外へ連れ出された私。
一時間弱車に揺られて到着した目的地に降り立つと、その広い敷地の中に佇んで隣にいる充の顔を見上げた。
「ここが、私を連れて来たかった場所……?」
「そ。……何か思い出さない?」
「何って……」
言いながら辺りを見回し、目に留まるのは……
歴史を感じさせる色褪せた外壁の図書館だったり、それとは対照的な、まるでオフィスビルのようなガラス張りの校舎。
遠くに見えるグラウンドでは、サークル活動に励むラガーシャツ集団のランニング風景……
そりゃあ、何度かここには来たことがあるから、見覚えがないこともないけど。
「ここに思い出があるのは、むしろ充の方でしょ?」
……あなたの、母校なんだから。
怪訝な顔をする私を見て、充は少し肩を落とす。
「……やっぱり忘れてる」
「何をよ?」
「まあいいや。中入ればさすがに分かると思うから」
私の手を握って、建物のある方へ進んでいく充。
……ああなんか、この辺からちょっと懐かしいかも。
大学教授だったずいぶん年上の彼に会いに行くときに、いつも通っていた場所だ。
そういえば、充は彼と私が付き合っていたこと知っていた。
まさか、そのことを掘り返すつもりじゃないわよね?
充と恋人同士になった今、そんな昔の恋人のことなんて関係ないのに。