ゆとり社長を教育せよ。
「どうって……そんなの却下に決まってます」
なんで恋人を作るかどうかを、ゆとりくんに決められなきゃならないのよ。
私は確かに“あなたの”秘書ではあるけど、それ以上でもそれ以下でもないんだから。
「やっぱりズルいです」
社長は不服そうに腕を組んで私をにらむ。
「……何がですか」
「だって、高梨さんは俺のプライベートにまで踏み込んでくるつもりなんですよね?」
「必要があれば」
「じゃあ俺にも踏み込ませてよ。そしたら、もうちょいマジメに仕事してもいいですよ?」
……コイツは。どんだけ仕事をナメたら気が済むのよ。
私が学校の先生なら「廊下に立ってなさい!」と叱って、ついでに一発ゲンコツも落としたいところよ。体罰教師と言われてもいいわこの際。
……でも。
その約束を成立させれば私の仕事はいくらか楽になる?
よく考えたら、今の私は恋人を作れなくたって特に困らないのよね。
千影さんの件で痛い目を見たばかりだし、どうせ今はこの社長のお守りで手一杯で、恋人を作る余裕なんて――……