ゆとり社長を教育せよ。


二十分くらい走ったところで、車は大型のスーパーへと到着した。

先に車を降りて歩く私は、ハンバーグの材料を必死に想像しているから当然上の空。

まず、挽き肉よね……牛肉買っとけば間違いないわきっと。

あと、さっき玉ねぎって言ってたから玉ねぎと……あとは……?

ハンバーグなんて作ったことのない私は、調理済みのハンバーグを脳内で解剖してみるけど、肉を切って出てくるのは肉汁くらいなもので、材料はさっぱりわからない。

どうしよう、今さら料理できないなんて言えないのに……



「――高梨さん、危ないって!」

「え?」



後ろから強く腕を引かれて、我に返ってみれば、目の前を車が通過して行った。

運転席の男性は、ものすごく迷惑そうな視線を私に送っていた。

でもそれより怖い顔をして私を睨むのは、私の腕を掴んだままの社長だ。


「駐車場とはいえ、飛び出したら危ないですよ」

「ごめんなさい、ちょっと、考え事してて……」


わー、ゆとりくんに叱られるなんて、なんかすっごく恥ずかしいんですけど!

しかもその理由が飛び出しって、子供じゃないんだから……


「ほんと、しっかりしてるように見えて、そうでもないですよね」


呆れたように言われて、私はむっとした。


「あなたに言われたくありません! 今のは、私の不注意、ですけど……」


さっきの失態を思い出して言葉が尻すぼみになる私を、社長がクスッと笑う。


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