ゆとり社長を教育せよ。
……そう思うなら、手当てしないでよ。
正直カチンときたけど、今までの一連の醜態は確かにひどかったと自分でも思うから、特に反論することができない。
「まぁでも、俺も悪かったです。高梨さんが面白いから意地悪しすぎました」
意地悪? なんのこと?
「……どういう意味ですか?」
私が尋ねると、絆創膏を巻き終わった社長が、顔を上げた。
「本当は、あんまり料理得意じゃないんですよね? それ知っててここに連れてきました。この状況を高梨さんがどんな風に切り抜けるのかなって気になったから」
な……なんですって?
じゃあ、玉ねぎどうこうの質問とか、買い物の時に食材選んでくれたのとか、“手を切らないように”とか、そういうの全部私をからかって――!!
「私、帰ります!」
一気に頭に血が上った私は、社長の横をすり抜けてリビングに向かうと、床に置いてあった自分のバッグを手に部屋から出ようとした。
でも、廊下へ続く扉の前には社長が立っていて、私の行く手を阻む。
「せっかくだから、ご飯一緒に食べましょう? 食材、二人分買っちゃったし」
「……結構です。それに、食材があったところで私は料理できませんから」
「高梨さんは座っててくれればいいです。俺が作るから」
……俺が作る? いやいや、片づけとか苦手で家事代行に掃除を頼むアナタが料理できるとは思えないんですけど。
「変な物食べさせられそうって思ってます?」
「とても」
私が即答すると、社長はわざとらしく肩を落とす。