ゆとり社長を教育せよ。


「――これ、本当に社長が作ったんですか?」


右手にナイフ、左手にフォークを持つ私がじっと見つめる先にはふっくらとした美味しそうなハンバーグ。

その完成度は、私のいない隙に家事代行業者を呼びつけて作らせたんじゃ……と疑いたくなるほどだ。


「掃除は苦手ですけど、料理は好きなんです。さ、熱いうちにどうぞ」


椅子を引いて私の向かい側に座った社長が、頬杖をついて私がハンバーグを食べるのを待っている。

そんなにじっと見られたら食べにくいんですけど……


「………んむっ」


社長の視線を疎ましく思いながらもお肉をほおばった私は、思わず変な声を洩らしてしまった。

だって……何これ。もはや家事代行業者というより、どっかのレストランからシェフ連れて来たんじゃないのっていうレベルの美味しさ。

でも、素直に「美味しいです」というのはなんだか悔しいから、言葉にならない声が出てしまったのだ。


「どうですか?」

「……まず、くはないです」

「よかったー。高梨さんの“まずくない”って、きっと“美味しい”ですよね?」


なっ! なんでバレてるの――!?

思わずげほっと咳き込んだ私に構わず、社長も自分の分のハンバーグを口に運んで満足そうな笑みを浮かべる。


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