ゆとり社長を教育せよ。
「……美也ちゃん、この後って、暇かな?」
――ほら、言ってるそばからお誘いが!
今、千影さんにんにく付きの牛肉のタタキ口に入れたし、もしかして肉食獣になる気だったりして……!
「はい、何もありませんよ?」
ガッツポーズを決めるのは心の中だけに留めておいて、私は期待半分、恥じらい半分の上目遣いで彼を見つめる。
「ダーツ、やりに行かない?」
「ダーツ……ですか?」
なーんだ。千影さん、まだ紳士の仮面剥がさないのかぁ。
少々がっかりしつつも、千影さんから食事以外のデートに誘われるのは初めてのことだから、それはそれで嬉しい。
千影さんにダーツって、よく考えたらすごく画になりそうだし、彼のこともっと好きになれるかも。
「近くに一人でよく行くお店があるんだ。そこはバーも兼ねてるし、美也ちゃんさえよければ移動して飲み直さない?」
「はい、是非!」
一人でよく行くお店に連れていってもらえるって……これはかなりの進展?
うん、そう思うことにしよう。
私は、千影さんのテリトリーに踏み込んでもいい女……ってことだものね。