ゆとり社長を教育せよ。
「……どうしたんですか?」
『今、ここに、たっ……たかっ……』
「鷹?」
まさか猛禽類(もうきんるい)がうちの会社を訪ねてくるわけがない。チョコより肉食だろうし。
ってことはあのAV男ゆ……いやいや、それは鳥と同じくらいあり得ない。
もう電話じゃ状況がよくわからないから、直接受付に行くしかないか……
「今、そっちに行きますから」
そう言って電話を切ると同時に、秘書課の扉がガチャリと開いた。
こんなに早い時間に出勤してくるのは、亜紀ちゃん……?
「おはよーございます、高梨さん」
……げ。どっちの鷹よりも面倒な人が来た。
いつもより早い時間なのに今日もバッチリ決まったパーマスタイルの前髪が揺れるのを見て、私は一歩後ろに下がる。
「お、はようございます……社長」
引きつった笑みで挨拶をした私に気付いてるはずなのに、彼は穏やかな口調でいきなり私の神経を逆撫でする一言を口にした。
「指、もう平気なんですか?」
……いきなりそのことに触れるか。
まだ痛いわよ! ざっくりいったから!
手を洗うたびにしみて、あなたの顔を思い出して舌打ちしてるわよ!
とは、なんか悔しいので言わないでおく。
「……おかげさまで。あの、今受付に用があって急いでるんですけど」