ゆとり社長を教育せよ。


そうして訪れたダーツバーは、ちょっとレトロな内装が素敵なオトナの遊び場という感じだった。

千影さんが言ったようにカウンターではドリンクのオーダーもできて、店内には他にカラフルな光を放つジュークボックス、それにビリヤードの台まである。


「千影さん、頑張って!」


私はダーツのルールなんて知らないから、ジントニックを片手に千影さんの応援に徹する。


「美也ちゃんが見てると思うと……外れるかもな」


そう言いながらも投げる姿勢に入って、真剣な目をした千影さん。

彼が連続で三本投げたダーツはすべてが中心を数ミリずれただけで、私は大袈裟に拍手をして千影さんを誉めた。



「すごーい!」

「ありがとう。……実はすごく緊張してたんだ。美也ちゃんにカッコ悪いところは見せたくないからね」

「ふふ。カッコよかったです、とっても!」



いつか私にも、ダーツボードを見つめるときのような視線を向けて欲しいって思っちゃったくらい。

微笑みながらまたグラスを傾けようとすると、突然その手に千影さんの大きな手が重なった。


「千影さん……?」


――ドキン、と胸が跳ねる。

彼は、こちらが期待するような甘い言葉をかけるのは得意だけれど、こんな風に直接触れてくることはあまりない。

もしかして、本当に、今夜は何かが進展する――?


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