調導師 ~眠りし龍の嘆き~
子どもの成長を感じられない。

もどかしい。

不安。

夫が側にいない。

出会って十数年。

お互い存在すら知らなかった月日があったのかと思うと不思議だ。

それほどに、夫の存在は自然なものなのだ。

側にいないことが奇妙で落ち着かない。

「あなた…」

もう会えないんじゃないか。

この先一生会うことができないかもしれない。

死ぬまで…。

恐ろしい。

想像するだけでスッと冷えていく身体。

この瞬間に死んでしまいたい。

魂だけの存在となって会いに行きたい。

狂おしい程の愛。

渇望する想い。

これ程の情愛を自身が抱いているとは知らなかった。

離れて気づくとは…。



会いたい。
会いたい。
会いたい。



想いに潰されそうになる。

側にいられないと言うなら、死んでしまいたい。


ねぇ。

今でも一番かしら。

お兄さんより愛してくれている?

あれから、たくさん増えたでしょ?

大切な人が増えたはず。

私は今も一番でいられている?



「……っ」

涙が滲む。

いつからこんなに弱くなったのだろう。

大切に想いすぎて、自分を守る事をしなくなった。

自身よりもあなたを守りたい。

自身の守りがなくなってしまったとしても。

そのために傷ついても構わない。

あなたを守れるなら。

一緒にいる事を許してくれるなら。


ガチャ。
キキュイ。

「出ろ」




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