調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜黒の再来〜‡
日、心配する祖父母を宥め、いつも通り学校へと出掛ける。
昼間の襲撃はないようで、別段変わった様子もない。
「今日は剣道の稽古日だっけ?」
「うん」
「美南、部活は入らないの?」
「部活とは別でやりたいの」
「でもピンチヒッターはやってるじゃん」
「あれはまた別の問題」
「わからん」
「気にしなさんな」
十歳になる頃、周りの子ども達がそろばんやピアノを習い始めたと知った祖父母は、何か習いたいものはないかと聞いてきた。
その言葉に、一も二もなく剣道をやりたいと答えた。
予想外の注文に戸惑う祖父母を尻目に、ある決意に闘志を燃やしていた。
心には父の顔が浮かび、次いで祖父母の笑顔が浮かんでくる。
守りたいと思った。
今度は守ろうと思った。
失うことの恐ろしさを知っているからこそ、心には強い決意が宿っていた。
強くならなければならない。
私は強くあるべきだと…。
通い慣れた道場は、学校から家とは反対方向にある。
アルバイトが休みの週に二日しかできない稽古は夜遅くまで続き、残って自主練習をすることもしばしばだった。
今日も八時を過ぎた頃、ようやく帰る気になったのだ。
「気をつけて帰れよ」
「はい。
ありがとうございました」
街灯が所々点在し、人通りの少ない道を更に物悲しいものにしている。
『っシュッ』
「っ痛ぅっ!!」
日、心配する祖父母を宥め、いつも通り学校へと出掛ける。
昼間の襲撃はないようで、別段変わった様子もない。
「今日は剣道の稽古日だっけ?」
「うん」
「美南、部活は入らないの?」
「部活とは別でやりたいの」
「でもピンチヒッターはやってるじゃん」
「あれはまた別の問題」
「わからん」
「気にしなさんな」
十歳になる頃、周りの子ども達がそろばんやピアノを習い始めたと知った祖父母は、何か習いたいものはないかと聞いてきた。
その言葉に、一も二もなく剣道をやりたいと答えた。
予想外の注文に戸惑う祖父母を尻目に、ある決意に闘志を燃やしていた。
心には父の顔が浮かび、次いで祖父母の笑顔が浮かんでくる。
守りたいと思った。
今度は守ろうと思った。
失うことの恐ろしさを知っているからこそ、心には強い決意が宿っていた。
強くならなければならない。
私は強くあるべきだと…。
通い慣れた道場は、学校から家とは反対方向にある。
アルバイトが休みの週に二日しかできない稽古は夜遅くまで続き、残って自主練習をすることもしばしばだった。
今日も八時を過ぎた頃、ようやく帰る気になったのだ。
「気をつけて帰れよ」
「はい。
ありがとうございました」
街灯が所々点在し、人通りの少ない道を更に物悲しいものにしている。
『っシュッ』
「っ痛ぅっ!!」