調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜不安〜‡

覚えている。

優しく諭すような温かい声。

悲しみも一緒に思い出すけれど、絶対に忘れてはいけない思い出。

「それで美南ちゃん。
誰にやられたんだい?
将さん達に、部屋であったことは聞いたが、同じ人かい?」
「うん」
「誰か分かったかい?」
「…宝堂に命令されたって言ってた…」
「っ!!
…宝堂じゃとっ」

祖父母の息を呑む様子に、話すのはまずかったかとも思ったが、心配をかけてしまった手前、隠し事をするのは憚れる。

「宝堂か…気に入らんな」

そう言って、永久先生は何かを思案する様子で黙ってしまった。
祖父母も、お互いの顔を見合わせて何か戸惑っているようだ。

「どうしたの?」

眉間の皺を濃くした先生は、一瞬祖父母に伺うように目を向け、こちらに向き直った。



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